世の中の基本は、太陽・地球・宇宙、親子・家族・夫婦、食糧ということの中にある。すべての基本をここに据えて考えを発展させていけば、間違いは起こらない。
太陽・地球と宇宙は、われわれに生命を与え、それを生かしてくれている。人間は家族を形成し、助け合って暮らしを立てていく。親は、損得など忘れて子を育て、未来につなげていく。そして、日々の暮らしを安定させ、発展させるためのエネルギーを得るため、働く。自分たちの周りの自然に働きかけ、手入れしていく。
人々は互いにそれらのことを考え、助け合って生きているということを確認できれば、物事は円滑に進み、人々は生きがいと希望を見出すことができる。
商売をするのも同じだ。商取引では、買う側がよろこび、売る側もよろこぶということが非常に大切だ。また、貸し借りにあっても貸す側がよろこび、借りる側もよろこぶ、ということが基本になくてはならない。世の中の基本を抜きにして考えることは決してしてはならない。
金銭貸借でも、貸し手は元金が増えることをよろこぶのではなく、貸付高が増えることをよろこびとしなければならない。たとえわずかの元金でも、それを繰り返し貸し付けることは、結果的に社会の付加価値を増進することにつながる。古語にも「敬するところの物少なくして、よろこぶ者多し。これを要道という」とある。その志を忘れてはいけない。
(山崎英一著「新日本を興す二宮翁夜話講義」から)