皆さんの持ってる現金を見て下さい。硬貨、紙幣、電子マネーなど。これをたくさん持っているほど、いろいろな品物が手に入る。また、いろいろな品物を持っていれば、通販サイトやオークションで売って、お金にできる。とても便利だ。
ではもう一度、現金をよく見てほしい。
紙幣。特別な紙に特殊なインクで絵と文字が書かれている。硬貨は?通常は金属が丸く形づくられ、表面に金額が刻印されている。
紙幣なら、通し番号、貨幣なら、発行した年。この違いはあるが、あとは同じ。すくなくとも、我々は「同じ」と思う。逆に、同じでなくてはならない(代替性)。違っていれば、他国のお札かニセ札ではないか。細かな点は抜きにして、どのお金も、記号以外のこれといった個性はないのだ。その没個性的な存在に対して、私たちは躍起になる。
貨幣、お金の問題に挑んだ哲学や経済の本などは古くから実にたくさんあるが、そんな難しい議論とは無関係に、私たちは毎日お金で食料や欲しいものを買い、働いた分をお金でもらう。持ちなれない大金を持つと、世の中のものすべてが手に入ったような錯覚に陥る。
それは、自分の得たお金が「得たときと同じように自分も使える」と信じているからに違いない。皆さんが、そう信じている。つまり、お金は信用の産物なのだ。
これを「信用創造」と言ったりする。信用は「目には見えない」。見えようが見えまいが、お金は便利なもの。嫌いになる必要はない。どれほどお金やでイヤな思いをしても。